「成形加工」9月号に第6回高機能性プラスチック展のレポートが掲載されました。

プラスチック成形加工学会の会誌「成形加工」9月号(8月20日発行)に「会議見本市だより 第6回高機能プラスチック展」が掲載されました。

 

掲載された内容は以下の通りです。

はじめに

第6回高機能プラスチック展は4月5~7日に東京ビッグサイトで開催された高機能素材Week2017の一部として開催された。本レポートでは、プラスチック材料、加工品、プラスチック加工及び装置に関連する展示に絞って報告する。

プラスチック材料

JXTGエネルギーは、JXホールディングス㈱と東燃ゼネラル石油㈱の経営統合によりJXエネルギーから社名変更した。主な展示内容は、液晶ポリマー(ザイダー)、脂環式エポキシ化合物、ピッチ系炭素繊維、熱可塑性エラストマー(ジェラティック)、反射防止・曇り防止加工、蓄熱材等である。
住友ベークライトは防錆フィルム・防湿フィルム・防カビフィルム等の機能フィルム、熱硬化性樹脂と金属の接合、高引裂き性シリコーンゴム、長繊維強化フェノール樹脂等を展示していた。

熱硬化性樹脂と金属の接合は設計の自由度と製品の信頼性を高めるとのこと。ガラス長繊維フェノール樹脂は3次元複雑形状の成形も可能であり、CFRPプレプリグを用いる方法よりもサイクルタイムが短くなるという利点もある。従来のシリコーンゴムは低硬度に設計すると引き裂き強度が高くならないという課題があったが、高引裂きシリコーンゴムはクラックの成長伝搬を抑制する構造を持ち、低硬度でも高硬度品並みの引裂き強度を持つ。ターゲットとなる分野はヘルスケア・医療・自動車等が想定されている。

アロン化成のエラストマーにはスチレン系・アクリル系・ポリエステル系・高熱伝導タイプがある。スチレン系のARにはガスバリアタイプがあり、ブチルゴムと同等のガスバリア性を持つ。ポリエステル系エラストマーであるエステラールの高耐熱グレードは耐熱老化性と低圧縮永久歪みに特長がある。また、エステラールの透明グレード、融着サンプルも展示されていた。

クラレプラスチックスはスチレン系熱可塑性エラストマー(アーネトン)の高反発タイプと低反発タイプを展示し、反発性の違いがわかるデモを行っていた(写真1)。その他には、比重0.7のエラストマーコンパウンド、メタリック調のエラストマーコンパウンド等を展示していた。

写真1 クラレプラスチックの高反発・低反発エラストマーの展示パネル

日本ポリプロは高透明PP、マット調PP、パール調PP等の意匠性を引き出せるグレードを多く展示していた。また、長鎖分岐構造を持つ高溶融張力PPであるウェイマックスの展示では大型の真空成形品が展示されていた(写真2左)。ウェイマックスの発泡用途に関しても、射出発泡の比較的大きな成形品を展示していた(写真2右)。発泡成形特有のスワールマークが目立たないのはメタロセン触媒を使って製造していることで結晶化速度を下げることができているためと思われる。

写真2 日本ポリプロの成形品展示サンプル 左:真空成形品、右:射出発泡(コアバック)成形品

ユニチカはメタリック着色したNANOCONメタリックのサンプルを多数展示していた。展示サンプルの中には富士精工で試作されたウェルドラインや流れムラを消した成形品もあった。また、発泡用ナイロン(フォーミロン)の成形サンプルも多数展示されたいた。

プラスチック加工品

ダイセルエボニックは、ゴムをポリアミドのシートに接合したコンポジットシートR-compoを展示していた(写真3)。ターゲットは靴底のようである。

写真3 ダイセルエボニックの樹脂・ゴム複合品の展示

阿波製紙は炭素繊維強化の熱可塑性樹脂シート(CARMIX)とそれを用いた複合成形品の展示を行っていた(写真4)。CARMIXシートはLANXESSのTEPEXシートと組み合わせてホンダの燃料電池車の部品に採用された(成形はタカギセイコー)。

写真4 阿波製紙の炭素繊維複合シートとそれを使った成形品の展示

日本合成化学は水に溶けるプラスチックフィルム(ハイセロン)、3Dプリンター用の水に溶けるサポート材フィラメント(MELFIL)を展示していた。水溶性フィルムは液体洗剤のピロー包装や水圧転写用フィルムとして用いられている。

プラスチック加工機械等

宇部興産機械のブースでは宇部興産機械と三菱重工プラスチックテクノロジーの射出成形機分野を統合したU&Mプラスチックソリューションズによるパネルと成形品の展示があった。サンプル数は多くは無いが、複合成形(PP繊維シートのインサート)、発泡成形、小型射出ユニット(プチ射出)を用いた二色成形によるステッチ部の加飾成形等が展示されていた。

セイコーエンジニアリングのブースではREGLOPLASのヒート&クール用温調装置が展示されていた。加圧熱水と水を切り替えるタイプであるが、戻った温水用のリザーブタンクを持ち、高温用の温調機に冷えた温水が直接入らないようにしている。

ミマキエンジニアリングはUV硬化型インクジェットタイプのフルカラー3Dプリンターを展示していた。CMYKに白、クリアーを加えた6色とサポート材2経路で造形する。価格は2000万円程度とのことであり、ストラタシスのハイエンドタイプよりははるかに安価であるが、柔軟な素材には対応できないとのことである。熊本城の造形品は畳の目まで造形しているとのことである。

成形技術・加飾技術

小野産業は高島グループに入り、その動向が注目されていたが、IPF2008以来の自社ブースによる出展である。経営の体制は変わっても多くの技術者がそのまま残り、アクティビティの高さを維持しているようだ。展示内容は、同社独自のヒート&クール成形技術(RHCM)を利用した複合技術である。具体的には異種材接着、フィルムインサート成形における微細パターン部分転写(写真5)、マイクロプレート(微細転写)、CFRTP強化シートIML、セルロースナノファイバー配合樹脂の発泡成形が展示されていた。

写真5 小野産業ブースのフィルムインサート成形とヒート&クール技術の組合せ技術

村田金箔は一次中断していた発熱パッドによる三次元ホットスタンプの課題を解決して再開した。同社はメタリック調ホログラムにも注力しており、TOM工法(転写TOM)対応製品も出している。

おわりに

プラスチックに関する展示会は年間通して多数開催されているが、プラスチック材料に関する出展が最も多いのが高機能プラスチック展である。そのかわり成形機メーカーや成形メーカーの出展はそれほど多くない。射出成形機メーカーが多く出展するIPFと補完されるようなイメージである。やはり装置と材料が揃って出展する展示会が必要なのではないかと考える。

 

なお、詳細なレポートはプラスチックス・ジャパン.comに掲載されています(https://plastics-japan.com/archives/2574