プラスチックとその類語を理解する

日常使っている「プラスチック」という言葉は英語ではplasticsと語尾に「s」がつく。「s」がつかないplasticとは可塑性があるという形容詞である(プラスチックの、プラスチックでできたという意味の形容詞として使われることもある)。

 

可塑性とは力を加えると変形させることができる性質のことであり、変形させる復元しない。プラスチックは熱をかけて融かすと変形させることができる。この性質を熱可塑性という。熱可塑性を英語で言うと、thermoplasticであり、plasticの語源がthermoplasticなのである。したがって、熱可塑性プラスチックという言い方は意味が重複しているのである。

 

熱可塑性と似た言葉にホットメルトという言葉がある。接着剤の中に熱で融かして、冷やして固めるホットメルト接着剤というタイプがある。

 

熱可塑性と対比して使われるのが熱硬化性である。この対比は実は少しおかしいのである。

実際には固めるために熱をかけるのが熱硬化性、冷やすのが熱可塑性である。

 

熱硬化性プラスチックという言いをすることもあるが、違和感を覚える。熱硬化性樹脂には「プラスチック」という性質は無いからである。それでも熱硬化性プラスチックという言葉が使われるのは、プラスチック=人工的な有機材料という意味合いがあるのだ。

 

プラスチックと同じように使われる言葉に「樹脂」がある。本来は単に「樹脂」ではなく、「合成樹脂」が正しいのであるが、省略されて「樹脂」という言葉が使われている。

 

天然の樹脂とは松脂に代表される物質である。ちなみに松脂の成分はアビエチン酸と呼ばれる分子量が300程度の化合物である。

 

合成樹脂とは人工的に合成された松脂状の物質のことであるが、我々が樹脂と呼んでいる素材は松脂とは程遠い。松脂に似ているのは石油樹脂と呼ばれる粘着性がある高分子だ。

 

樹脂という言葉は業界によって異なる使い方がされる。塗料や接着剤業界では粘着性を付与するために添加する材料である「粘着付与樹脂」のことを樹脂という。前出のアビエチン酸は粘着付与樹脂の一種である。

 

プラスチックはいずれも高分子化合物である。高分子は英語でpolymerだと思っている人が多いが、それは正確ではない。Polymerとはmonomerが重合していくつかつながったものを指すが、分子が大きいという意味合いは本来含まれていない。正確にいうならhigh polymerである。類語としてMacromoleculeという言葉がある。これは巨大分子という意味で、monomerが重合してできあがったかどうかは問題ではない。

 

上記のように、プラスチック、樹脂、ポリマー、高分子は似ているがニュアンスが少しずつ違っている。