PETボトルのごみ問題の解決はプラスチックの活用で!

はじめに

海洋に流出したプラスチックごみが世界的な問題になっている。海洋だけでなく、公園の植栽の中や、河川敷には大量のプラスチックボミが投棄されている。投棄されるプラスチックごみにはPETボトル、レジ袋、発泡スチロール容器などと多岐に渡る。環境省の調査によると海底ごみの中で最も多かったのは発泡スチロール由来のごみである。また、河川敷に投棄されているごみの中で量的に多いのは使用済みPETボトルであると言われている。

<参考情報:海洋プラスチックごみ問題 (第1報)
<参考情報:荒川クリーンエイドフォーラムHP
<参考情報:平成28年度海洋ごみ調査の結果について

廃棄されるPETボトルを減らす・無くすためには、今捨てている人がその行動を止める以外に方法が無いのは確かである。そうは言っても、責任を投棄する人だけに負わせるのではなく、PETボトルを使う社会を容認した社会として責任を負うべきことでもある。

ペットボトルにおける3R

3Rとはリデュース(削減)、リユース(再使用)、リサイクルのことである。

PETボトルにおけるリデュースには、ボトルの販売量削減とボトルの軽量化の両方からのアプローチが有るはずだが、実際に取り組まれているのは軽量化による1本当たりの樹脂量削減である。PETボトルの軽量化とボトル成形に必要なエネルギーの削減により、ボトルに販売増に対してエネルギー消費が横ばいで抑えられている。

<参考情報:PETボトルの軽量化(PETボトルリサイクル推進協議会)

リユースは、個人レベルで使用済みのPETボトルを水筒として使用して、家庭の水道水や浄水器を通した水を入れて使うという方法で行われている。一方で、洗剤のように軟包材に入った詰め替え商品は販売されていない。

リサイクルは、後述するように成形用材料となって、PETボトルに成形される場合、PETボトル以外の製品に再生される場合がある。PETボトル以外に再生された製品はいずれは可燃ごみあるいは不燃ごみとして処分される。

使用済みPETボトルの流れ

まず、定性的ではあるが使用済みPETボトルの流れを見ていこう。

図1 使用済みPETボトルの流れ

マテリアルリサイクル

使用済みPETボトルのメインの流れは、自販機横の回収ボックスや自治体の資源ごみ回収であろう。

回収されたPETボトルは機械あるいは手作業による分別・細かいフレークへの粉砕・水による洗浄・比重によるキャップやラベルの分別除去・乾燥などの工程を経て、成形可能なフレークになる。

得られたPET樹脂のフレークの内で、高品質なものはPETボトルの成形用に使用して新しいPETボトルとして生まれ変わる。

<参考情報:ボトルtoボトルリサイクル(協栄産業)

品質が高くないものは、シートに成形されて卵パックやブリスターパック等の真空成形品、添加剤や着色剤を加えてコンパウンドに加工されて射出成形されて日用品、繊維に加工されてフリースジャケット等に用いられる。

<参考情報:再生PET樹脂の用途(PETボトルリサイクル推進協議会)
<参考情報:リサイクルPETの射出成形分野における活用 ~衝撃特性・耐熱性・印刷性の改質~

これまでは、正規なリサイクルルートになっていないPET樹脂が中国に大量に輸出されていたが、中国政府がプラスチックごみの輸入を止めたことでバランスが崩れているとの情報もある。

可燃ごみ

PET樹脂は可燃性で発熱量がPPの約半分と小さい(5500kcak/kg)ので焼却処分が可能である。したがって、PETボトルからリサイクルされた卵パック等は可燃ごみとして処分すればよい(ただし、「燃やすごみ」と「燃やさない」の区別は自治体によって異なる)。

リサイクルに回せないような汚れたPETボトルは可燃ごみとして処分すればよい。例えば、食用油(PET以外の素材もあるので注意が必要である)の容器として使用されたPETボトルはリサイクルに回すのではなく可燃ごみとして処分すべきである。

エネルギー回収型廃棄物処理施設は、電気や温水としてエネルギーを取り出すこともできるが、単純に焼却するだけの処分場も多い。

不燃ごみ・容器包装リサイクル

PETボトル以外のごみの分別は自治体によって大きく異なる。ここではPETボトル以外のプラスチックの捨て方に触れておく。

プラスチックごみは燃焼熱が大きいために燃焼炉を傷めるとの理由で長く不燃ごみとして分類され、埋立処分されてきた。

近年では焼却炉の性能向上によって埋立ではなく、焼却処分が一般的になってきた(例:千葉市)。また、容器包材用プラスチックは別に回収して、アンモニア製造の原料として用いる取り組みもある(例:横浜市)。アンモニアの製造は昭和電工(株)で行われている。

<参考情報:千葉市ごみ分別事典

<参考情報:プラスチック製容器包装(横浜市資源循環局)

<参考情報:プラスチックのケミカルリサイクル(昭和電工)

使用済みPETボトルが不燃ごみに混入して埋立処分される可能性は十分にある。プラスチックごみを埋立処分すると、大雨や台風の際に処分場から流出する可能性がある。

不法に投棄されたPETボトル

道端や繁みの中にPETボトルが捨てられるのを見ることは多い。これらは屋外で飲み終わったボトルをその場で捨てるためであろう。町中に自販機があることも原因のひとつで、どこでも買えるからどこでも捨てるのであろう。教育・しつけの問題とは言え、それだけに頼れないのも事実であろう。

草むらに捨てられたPETボトルは軽いために風に飛ばされ、雨に流される。台風の後には関東全域の川に流れ込んだPETボトルごみが東京湾に流れ出し、幕張の浜等に打ちあげられている。

もちろん、ボランティア団体等の活動によって収集されたごみは分別されて、可燃ごみや不燃ごみとして処理される。
<参考情報:海洋プラスチックごみ問題 (第2報)

PETボトルごみを減らすには、PETボトルを買わない社会が必要!

私自身がプラスチック業界の中に身を置く者であり、私の人的ネットワークの中にはPET樹脂を製造する企業に勤務する者、PETボトル製造用の装置や金型を製造する企業に勤務する者、PETボトルを製造する企業に勤務する者、飲料メーカーに勤務する者が多く含まれる。

したがって、本来PETボトルの販売に逆行することを発信することは自分の首を絞めることにもなりかねない。

PETボトルの真のリデュース

いろいろな技術の進歩により生活は便利になったが、自分たちの住む地球環境を守るためには、あえて不便なことをするという犠牲も必要である。

例えば、飲む水をPETボトルで購入するのではなく、自分のボトル(マイボトル)で持ち歩くというライフスタイルがあり、ブームになっている。インターネットで「マイボトル」で検索すると多くの製品がヒットする。

マイボトルの分類

マイボトルを分類すると以下のように分類される。

・材質による分類:ステンレスに代表される金属のボトルとプラスチックボトル(主に透明な製品)

金属のボトルの中には二重構造で保温機能を持たせたものもある

プラスチックのボトルの多くは透明で耐熱性、耐衝撃性に優れるPC(ポリカーボネート)製であるが、ビスフェノールA(BPA)が溶出する問題が指摘されたことにより、コポリエステル樹脂の製品も出ている。コポリエステル樹脂はPET樹脂と同じくポリエステル樹脂に分類される。

近年、PC(ポリカーボネート)の代替素材としてEastmanの「TRITAN」が注目されている。この材料は耐熱性,耐衝撃性に優れた透明樹脂であり、BPAの溶出が無いため、高級なマイボトルの容器に広く採用されている。

<参考情報:Eastmen社のコポリエステル「TRITAN」

・浄水機能の有無による分類:浄水フィルターが内蔵されているボトルと、フィルター無しのボトル

例えば、BRITAの「fill&go」という製品には、厚み6㎜、直径55㎜のフィルターが取り付けられる(図2)。

図2 BRITAの浄水フィルター付きボトル

成人が一日に飲む必要がある水の量は1.5Lと言われている。家庭に浄水器があって、その水をマイボトルに入れて持ち歩くとしても、1.5Lの水を持ち歩くのは現実的ではないため、水道水を補給できる浄水機能付きのボトルは便利である。

高性能な浄水器付きマイボトル

浄水器付きマイボトルの中には、とことん機能に拘った製品もある。

ARIIXの「PURITII(ピュリティ)」は図3に示す多重構造のフィルターを備えたボトルである。本体はEastman社のコポリエステル樹脂「Tritan」を使用していることが明記されている。フィルターのハウジングにはFDA承認のプラスチック使用を明記している。

図3 ARIIXの「PURITII」ボトルとフィルターの構造

<参考情報:ARIIXの「PURITII」の技術紹介ページ

おわりに

使用済みPETボトルごみの問題から、何かとプラスチックが悪者にされる傾向にある。地球環境を保護するためには、PETボトルの使用を減らすことにも取り組む必要があり、そのための切り札になるのはやはりプラスチックである。

高性能な浄水機能付きマイボトルを持ち歩くことは、災害時への備えにもなることに気が付き、家族で使用している。

使い捨てプラスチックから、耐久性あるプラスチックの使用にシフトするだけで、環境悪化を食い止めることが出来るなら、多少の我慢を受け入れて、最先端のプラスチックの製品を使うことにに胸を張っていきたい。