技術士事務所とは

技術士が開業して屋号をつける際に、〇〇技術士事務所と名乗ることが多いのですが、そもそも技術士事務所とは何でしょうか?

技術士を名乗る前提

技術士は技術士法で定められた名称独占の国家資格です。ただし、技術士法第2条により、技術士を名乗ることができるのは、第2条に定められた業務を行う者に限られます。(実際には業務を行っていないのに技術士を名乗っている人もいます。)下記の技術士法第2条の条文の最後の方にある「業務を行う者をいう」の部分が根拠です。

この法律において「技術士」とは、第32条第1項の登録を受け、技術士の名称を用いて、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務(他の法律においてその業務を行うことが制限されている業務を除く。)を行う者をいう。

したがって、技術士登録して技術士を名乗る者は、技術士の業務を行う旨の宣言として業務を行う「場」を届ける必要があります。

技術士事務所の登録

技術士法施行規則第十四条で定められています。

企業に在籍して技術士業務を行う場合

いわゆる「企業内技術士」であり、将来独立起業を目指すか、生涯企業に勤めるつもりかは問いません。したがって、「起業無い技術士」とは意味が違います。

この場合は、在籍する職場を「事務所」として登録します。その際に勤務先からの同意書、及び 事務所として登録する会社等による証明書が必要です。

企業に在籍しながら副業として技術士業務を行う場合

企業等の組織に在籍しながら、週末にはコンサルティングを行う等の活動は所属先の業務と利益相反しない限り許されるものと考えています(私見)が、組織によって就業規則で定められた内容に違いがあるのが実態です。(副業禁止といっても、同時に他に雇用されないことと定められている場合、個人事業として活動することは制限されません。そうしないと兼業農家が成り立ちませんね。)

この場合は所属先の同意書が必要です。

もっぱら本業として技術士業務を行う場合

狭義の技術士事務所がこれです。個人事業主として業務を行う場合と法人化して業務を行う場合があります。形態によらず技術士を職業とするケースです。私は確定申告の際の職業欄には「技術士」と書いています。

自分自身が雇用主なので、同意書も証明書も不要です。

本題

技術士登録申請

技術士登録申請書(様式第五)には、「自ら業務を営むときの事務所」あるいは「他に勤務するときの事務所」のいずれかに「名称」と「所在地」を記載する必要があります。前者の記載例には、〇〇技術士事務所と書かれています。名称には「屋号」を記載する旨の指示は無いので、本名を書いても構わないはずですが、多くの方が屋号を記載していると想像されます。

屋号とは

個人事業主が業務を行う際に、個人の立場なのか、事業主の立場なのかを区別する必要性に迫られることがあります。法人と異なり、個人事業は個人名でも営むことは可能ですが、事業主であることを明示的に表現したい場合は屋号が便利です。屋号は義務ではありません。銀行によっては屋号付き口座を開設することも可能です。

結論

技術士事務所とは、技術士法施行規則で定められた技術士登録を行う際に、「自ら業務を営むときの事務所」として記載する「屋号」のこと。